5月課題本の「不道徳教育講座」の面白さを徹底解説!

はじめに「不道徳教育講座」狂気の目次ラインナップ

三島由紀夫『不道徳教育講座』を課題本とした横浜読書会konkonのイベント告知バナー

横浜読書会konkon第1回課題本読書会は、三島由紀夫の「不道徳教育講座」がテーマです。
目次をパラパラめくるだけで、おそらく「なんじゃこりゃ!」とびっくりする言葉が目に飛び込んできます。

「教師を内心バカにすべし」(現代なら炎上必至…!)
「大いにウソをつくべし」(えっ、それ活字にしていいの?)
「人に迷惑をかけて死ぬべし」(はた迷惑すぎるでしょ!)
「スープは音を立てて吸うべし」(フレンチでそれやったら出禁になりません⁉)
「モテたとは何ぞ」(文豪が何を語るの……)

目次を見ているだけで「ふふっ」と笑ってしまいますよね。

高校時代に『金閣寺』を読んで、その透視するような洞察力にただただ圧倒された私ですが、
「不道徳教育講座」を読んで「三島由紀夫って、こんなに皮肉たっぷりな極上のユーモアを展開する人だったの!?」と大発見でした。

実はこの「不道徳教育講座」は、1959年に週間明星に連載された三島34歳の頃の作品。
中国の「二十四孝」を逆手に取った井原西鶴の「二十不孝」のパロディとして、戦後日本が「良識」やエチケットに縛られていく中で、三島は「もっと自由に、個として生きよ」とユーモアたっぷりに檄を飛ばしているんです。

▼Youtubeで「不道徳教育講座」を紹介しています。ぜひ、ご覧ください。


5月の横浜読書会(女性限定・年齢制限なし)、現役学芸員とゆる~く語る『不道徳教育講座』では、完読は不要です!

参加条件は、目次をぱらぱら見て気になった章を「書籍の前半・後半からそれぞれ1章ずつ」読んできてもらうこと。
1章1章がとても短く、堅苦しくない文体なので、三島初心者の方にこそぜひ来ていただきたいです。

しかも今回は、「不道徳教育講座」が大好きな現役学芸員のしほさんがファシリテーターです。
感想シェアの前に簡単なイントロダクション(解説)を設けているので、事前知識も不要です。

さて、5月の読書会へのお誘いもかねてこの作品の面白さを徹底的に解説していきます!

文豪・三島、見知らぬ青年のポエムを一蹴「名所旧跡面」というパワーワード

特に私が爆笑したのが、「死ぬ前にあんたの顔を見に行く」という面識のない文学青年からの手紙に対する回答(「人に迷惑をかけて死ぬべし」)です。

心中を予告する青年からの手紙には、「三島由紀夫君」などと馴れ馴れしく呼びかけられ、「小説を書くのをやめよ」という傲慢な遺言が記されていました。 その手紙に対して三島は、

「死ぬ前に人の顔を見に来るというのだが、私はナポリじゃあるまいし、『ナポリを見てから死ね』といわれるほど名所旧跡面をしているわけじゃない」(三島由紀夫『不道徳教育講座』角川文庫「人に迷惑をかけて死ぬべし」より)

と一蹴します。この言葉選び、天才的に面白くないですか? 名所旧跡面って何ですか。

見知らぬ青年からの手紙に呆れる三島由紀夫をイメージした画像 - 『不道徳教育講座』より

誰かに「親の顔が見てみたいわ」と嫌味を言われたときにも名所旧跡面使いたいですね。
「ご覧になっても構いませんが、うちの親はそれほど名所旧跡面しているわけではございませんし…お時間がおありなら金閣寺でも見に行きはったらどうです?」と。

▼この章について当時の文学的背景をnoteでもう少し詳しく解説しています。気になる方はこちらもどうぞ。
三島由紀夫「不道徳教育講座」名所旧跡面のパワーワードの意味

スープをズズーッ!は社会への反逆?

「スープは音を立てて吸うべし」の章も最高です。
静まり返った高級レストランで、ズズズーッと音を立ててスープを啜る。
これこそが「社会的羊ではない」ことを証明する知的な闘争であり、芸術的な抵抗だそうです。

エチケットとは「社会的羊」が群れをなすためのルールに過ぎない。
あえてそのルールを逸脱することで、個としての「狼の習性」を誇示しろ、と三島は説きます。

一見ただの迷惑な反逆に見えますが、これも「世間の顔色ばかりうかがう『群れの一員』になるな」という三島由紀夫の𠮟咤激励です。
社会の枠に押し潰されそうな若者に対し、『もっと自分本位でいいんだよ』と彼なりの不器用なエールを送っているようにも読めますね。

そう考えると、音を立ててすすっていいはずの蕎麦屋ですら、服への汁はねや周囲の目を気にして、箸で手繰り寄せるようにモグモグ食べていた私はなんて矮小な存在だったのでしょう。

『教師をバカにしろ』に隠された、三島流の逆説的優しさ

ただの胸くそ悪い悪党の開き直りかと思いきや、読み進めると、皮肉屋のふりをした「未熟な若者に真の精神的自立を促す大人の愛情表現」のようなものを感じ取れます。

たとえば「教師を内心バカにすべし」。
これは不良になれということではなく、表面上は「うんと従順に、礼儀正しく」振る舞い、大人の哀れさを見抜く知性を持て、というアドバイスです。

「教師を内心バカにすべし」イメージ - 三島由紀夫『不道徳教育講座』より

私が学生だった時、先生から理不尽な当てこすりを言われて泣きそうになったことがありました。
でも、三島流に見れば「先生もたまたま疲れていて虫の居所が悪かったんだろう。いやあ、大人ってたいへんだなあ。かわいそうに」とあっけらかんと笑えばよかったんですね。

繊細で世間知らずの若者が、大人からの心無い一言で傷つかないための、優しい忠告なのだと思います。

銀座の美少女に完敗!

そんな風に、常に上から目線で若者に説教を垂れる「講師」三島ですが、本書の白眉は、彼が現実のハイ・ティーン女子に翻弄される自虐的なエピソードです。

銀座の美少女たちに翻弄される三島由紀夫の自虐的エピソードを表現したイメージ

銀座で出会った美少女三人組に鼻の下を伸ばし、酒場へ誘った三島。
そこで彼は、少女たちに「腕の毛が濃い」と面白がられ、三人掛かりで腕毛を抜かれます。

さらに別れ際、手のひらを指でコチョッとされ、「これはサインか!」と動揺。
結局、自分がからかわれただけではないかと自省する姿は、実に人間味に溢れています。

シリアスな文豪から一転、「女子高生に絡んでからかわれちゃうおじさん」に自らを貶めてしまう痛快さ
完璧な美意識を持つ天才作家でありながら、こんな俗っぽくて不器用な一面があるなんて。
そのギャップがたまらなく人間らしくて魅力的です。

こんなクスッと笑える文豪三島の人間らしい一面を、一緒に語り合いませんか?

5月の読書会で、一緒にニヤニヤしませんか?

5月開催の横浜読書会konkon「現役学芸員とゆる~く語る『不道徳教育講座』」の申し込みバナー画像

『不道徳教育講座』は、文豪・三島由紀夫が全力でふざけて書いた、華麗なる悪党のためのサバイバル指南書。
ただ笑えるだけでなく、その裏に隠された社会への鋭い眼差しにハッとさせられるのもこの本の魅力です。
道徳に縛られて息苦しい現代人にこそ、この劇薬のようなユーモアが必要です。

「うわ!なにこれ面白い!ちょっと誰かに共有したい!」

そんな気持ちが湧き上がってきたら、ぜひ5月開催の「現役学芸員とゆるーく語る」読書会へお申し込みください!

【女性限定】の優しい空気感の中で、リラックスして自由に語り合いましょう。
『この章が一番笑った!』など率直な感想で大丈夫です。

繰り返しになりますが、完読は不要です!
書籍の前半・後半からそれぞれ、見て気になった章を「1章だけ」読んで来てください。
・前半:〜174頁(章の区切り)まで
・後半:174頁〜最後まで

第1回課題本読書会|現役学芸員とゆる~く語る『不道徳教育講座』
【日時】 2026年5月24日(日) 14:00〜16:00
【場所】 横浜駅徒歩5分 レンタルスペース
【人数】 6名限定
【参加費】 2,000円
【対象】 女性限定・年齢制限なし

読書会の流れ
自己紹介
前半: 作品のイントロダクション & 感想シェア
後半: 作品のイントロダクション & 感想シェア
写真撮影
アンケート案内

詳細は、ピーティックスのイベントページからご覧ください。ご参加を心よりお待ちしております。

▼残り1枠です!気になった方はお早めに…

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