横浜読書会konkonの課題本読書会について

2026年5月24日(日)、横浜読書会konkon初の課題本読書会『現役学芸員とゆる~く語る不道徳教育講座』を開催しました!
一般的な課題本読書会は、正しい知識を前提に文学について深く考察することを求められますが、konkonの読書会は課題本回においても「感じたこと」「思ったこと」を素直に語れるやさしい空気感を大切にしています。

横浜読書会konkon|第1回課題本読書会|現役学芸員とゆる~く語る『不道徳教育講座』|女性限定・年齢制限なし


今回は、現役学芸員のしほさんに、ゲストファシリテーターをお願いしました。→しほさんのプロフィールはこちら
読書会が初めての方や、三島由紀夫をほとんど読んだことがなかったという方も多かったのですが、皆さんとても生き生きと飾らない言葉で感想をお話されていました。
共感した部分や良いと思ったところだけではなく、「この部分はよくわからなかった」「女性観には、ムッ!と思いました」というコメントもオープンに笑いながら共有できる楽しい時間でした。

読書会当日の流れ

横浜読書会konkon課題本読書会「不道徳教育講座」本を並べた記念写真

2026年5月24日(日)14:00〜16:00以下のような流れでゆったり進行しました。

  • 自己紹介: お気に入りのドリンクを片手に、リラックスした雰囲気でスタート。
  • イントロダクション: 三島由紀夫という人物、そして今回の課題本についてゲストから解説。
  • 感想シェア(前半): 読了直後の率直な驚きや、社会の常識に対する違和感を共有。
  • 感想シェア(後半): 自然と議論が深まり、人生観や現代の社会との比較へ。
  • 記念撮影(顔出しなし):皆さんの本や参考文献を並べて本だけの記念撮影。
  • アンケート案内: 最後に、参加後のアンケートをご案内して終了しました。

三島由紀夫『不道徳教育講座』

前半:三島由紀夫 不道徳教育講座を読んだ感想

ファシリテーターの導入と解説

  • 『不道徳教育講座』は、昭和33年(1958)7月27日の雑誌『週刊明星』創刊号から翌34年(1959)11月29日号まで連載されたエッセイ。
  • 三島が本作を書いたのは30代前半。ちょうどファシリテーター自身の年代と重なることや、『「女性・エロティシズム・犯罪・若者」といった4つのテーマで内容を大分することができる』という見方をしている人もいたと紹介。
  • 映画化について。昭和34年(1959)に製作された同名の映画『不道徳教育講座』(西河克己監督、日活)は本書の内容をもとに物語化した喜劇。三島本人も冒頭と最後に登場。
  • ファシリテーター自身のお気に入りとして「死後に悪口を言うべし(171ページ)」を挙げ、「人が落ちぶれた時に褒めることで、結果的に自分を大きく見せられる」という、誰にでも経験がある人間心理の普遍性を提示し、皆さまの「あるある!」という共感を誘いました。

参加者さまの視点

前半は、三島が抱えていた生きづらさと、それを現代の私たちがどう受け止めるかという対話が中心でした。

「孤独」の正体に触れて
ユーモアをまといながらも、常識や世間を鋭く突き放すような三島の文章。
その裏側には、本人の孤独や寂しさ、そして「尖りすぎたゆえの生きづらさ」があったのではないか、という視点が共有されました。

「猫」に投影された温かい人間味
127ページ「人の恩を忘れるべし」では、人間不信になりがちな三島が、猫の気ままで淡々としたエゴイズムに安らぎを感じているように読める、という意見がありました。
その姿から、作家としての鋭さだけではなく、人間らしい温かさや素顔が垣間見え、心が和んだという感想も共有されました。

「男女の社会」の概念のズレ
男性社会と女性社会は、同じ場所にいても見えている景色が違うのではないか、そんな深い考察もあり、現代の職場や生活環境と重ねながら、そのズレを冷静に分析する視点が印象的でした。

「謝る」ことへの文化的な疑問
102ページ「罪は人になすりつけるべし」をきっかけに、日本人が「とりあえず謝る」文化についての議論も展開されました。
海外での経験と比較しながら、アメリカの州法である「アイムソーリー法」にも触れつつ、「もし三島由紀夫が現代社会を見ていたら、どのような意見を語っただろうか」という想像に話が広がりました。

「死」を美学的に考える若さへの共感
22ページ「人に迷惑をかけて死ぬべし」では、若者特有の全能感や独特の死生観について共感の声がありました。
かつて尖っていた自分自身を、大人になった今の視点で振り返るようなコメントもあり、年齢や経験によって読み方が変化する作品であることが感じられました。

過激な論説に見る、時代
暴力や性に関する過激な記述については、当時の社会背景や三島の人物像を現代の感覚と照らし合わせながら、「当時の人々はどのように受け止めていたのか」「現代の私たちならどう読むのか」を深く考えさせられる、という意見が共有されました。

作品そのものだけでなく、時代や価値観の変化まで含めて読み解く時間となりました。

後半:三島由紀夫 不道徳教育講座を読んだ感想

ファシリテーターの導入と解説

  • 作品後半で、文章の雰囲気が少し政治的・切羽詰まったものに変わることを指摘しつつ、「三島は自身の最期を予見していたのかもしれない」という考察が提示されました。
  • 三島由紀夫に対する世間のイメージが「ボディビルで体を鍛える変な人」と「真面目な作家」に二分されていることを紹介し、「実は人間味にあふれた面白い人だったんですね」と共感が広がりました。
  • 三島由紀夫の超自然への興味について。幼少期には祖母に歌舞伎や能へ連れて行かれていた背景があり、『近代能楽集』をはじめとする作品群には、生霊や怪異、現実と幻想の境界が揺らぐようなモチーフも登場すると解説されました。

参加者さまの視点

後半は、議論がよりリラックスし、三島の「知的なユーモア」や、現代の私たちが日常で大切にしたい知恵についての対話が溢れました。

人生を俯瞰する「遊び心」の処世術
135ページ「沢山の悪徳を持て」、145ページ「空お世辞を並べるべし」では、嘘や悪徳を単純に否定するのではなく、高い視点から人生を面白がるための「知的なゲーム」として捉える三島の姿勢に注目が集まりました。
その軽やかな視点に、肩の力を抜いて生きるヒントを見出したという感想もありました。また、そのような柔軟な処世術を持っていた三島が、自分自身の内面だけではなく、「社会や外部を変えよう」としたことで、さまざまな苦悩を抱えることになったのではないか、という深い考察も共有されました。

UFOや不思議現象に夢中な素顔
文豪というイメージとは裏腹に、UFOや霊的現象に強い興味を持っていた三島の意外な一面についても話題になりました。
「親近感がわく」「人間味に溢れていて微笑ましい」といった声もあり、知的で鋭い人物像だけではない、遊び心のある素顔に魅力を感じたという意見が印象的でした。

身体を「所有物」と捉えること
302ページ「プラスチックの歯」では、身体を自分の意思で改善し、手入れできる「所有物」として捉える三島の考え方に注目が集まりました。
その感覚に、現代の美容意識やセルフメンテナンス、自己管理の思想との共通点を見出したという視点も共有されました。

大きな恐怖と、目の前の小さな恐怖
246ページ「自由と恐怖」では、カエルのような小さな恐怖には敏感である一方、社会の大きな問題には鈍感になりがちな人間の感覚について、哲学的な問いかけがあるという意見がありました。
私たち自身の日常感覚にも重なるテーマとして、多くの共感を呼んでいました。

言葉を大切にしたいという感性
183ページ「キャッチフレーズ娘」では、定型句やありきたりなフレーズで会話を済ませようとする姿勢に対して、三島が強い苛立ちを見せている点が話題になりました。
その潔癖とも言える言葉への感覚に共鳴し、「自分たちも、自分自身の言葉を大切にしたい」と感じたという声が共有されました。

どんな時も「痛くも痒くもない」心
241ページ「サーヴィス精神」では、サービス精神を持ちながらも、周囲の反応に過度に振り回されない「大人物」の境地についての議論がありました。
「周囲を気にしすぎず、自分を貫ける人への憧れ」や、「日常の人間関係の中で、自分を守りながらしなやかに生きるための実践的な知恵として受け取った」という感想も印象的でした。

課題本読書会への参加者さま感想

読書会後の参加者さまの感想を紹介します。

初めての読書会がkonkonで本当によかったです。女性ならではの共感力と傾聴スキルのおかげで楽しく話せましたし、久々に自分の意見を言葉にする体験ができて心が満たされました。

みなさんのお話も思わず頷くことばかりでとても面白かったです!

課題本型だけど、多方面なテーマの短いストーリーがたくさんある本だったので、読了できてなくても楽しめて、とてもよい企画だなあ、と思いました。そして、女性限定もとてもよいですね。開催ありがとうございました。

同じ本を読んでも人によって視点が違っている為、色々な角度から切り込んだ意見があり、自分の視野が広がりました。時代背景や三島由紀夫の心境など、人物像に迫った対話になり楽しかったです。

女性同士ならではの緩やかな時間が流れ過ごしやすかったと思います。

読書会が初めてだったので緊張しました。参加者のみなさんが課題本だけでなくいろんな本のはなしを語ってくださったのでまたその中から次に読む本を探してみようと思いました。

二回目の参加ですが、とても楽しかったです。毎回ながら忘れていた感覚を取り戻して、日常から個人に戻れる気がします。本って自分の心のコアなところに位置するんだなと思い、そこが満たされる喜びが深いです。

また、和やかな雰囲気は女性限定ならではで、とても楽しかったです。

ご準備や心配りをたくさんしていただき、安心して参加出来ました。ありがとうございました。

今後の活動の励みにさせていただきます…!

ゲストファシリテーターへの参加者さま感想

参加者さまからゲストへの感想です。温かいコメントを沢山いただきました。

明るく、優しく進めてくださったのですごく良い雰囲気だったと思います。課題本に対するハードルも上がりすぎないように気を使ってくださっていたので気楽に意見を出すことができました。

今日はどうもありがとうございました。タイミングよく参考資料の紹介など話題に応じて提供して下さったので知識が増えました。課題本の存在も知らなかったですし、知っていたとしても手に取ったかどうか。読書会の醍醐味ですね。また宜しくお願い致します。

話している間、頷きながら共感していただいているのを感じて、とても話しやすかったです。また、みんなの話を深掘りしていただいたおかげで、話が深まって、とても良かったと思います。是非、またいろんな話を伺いたいです😊

緊張させられることもなく、フラットでとても話しやすく、新しい学びもあり、素敵でした。ありがとうございました。

リアクションしてくださるおかげで楽しく話せました!知識をひけらかすわけではなく、どんな意見にも肯定的で興味を持って聞いてくださるのが伝わりとても嬉しかったです。

皆さんの意見や感想・ゲストファシリテーターとのやり取りを聞く中で、主催の私自身も作品や作者を深めることができました。

ゲストファシリテーターの感想

ゲストファシリテーターしほさんからの感想です。

第1回課題本読書会にご参加いただきありがとうございました!
ファシリテーターをさせていただくのは初めてでうまくできるかな?と思っていましたが、参加者の皆様のあたたかく優しい雰囲気にとても安心し、楽しく読書会ができたと思います。
今回取り上げた三島由紀夫『不道徳教育講座』は昨年の秋に初めて読み、とても面白く、他の人の感想も聞いてみたい!と思っていました。この読書会で皆様の感想をお聞きできて、1人では得られなかった視点に気づかせていただいたと思います。
またお会いできますことを楽しみにしています!

しほさんが企画立案・資料提供・当日のファシリテーションまで全て引き受けて下さったお陰で、konkonの読書会に主1人では作れない新しい空気感や特色ができ、参加者の皆さんも新しい試みを心から楽しんでくださってとても嬉しかったです。
素敵な企画をありがとうございました。


↓しほさん作成の当日配布したレジュメは、こちらからご覧頂けます!

「現役学芸員とゆる~く語る不道徳教育講座」まとめ

この読書会の参加者の皆様は、単に三島由紀夫の文章を分析するのではなく、ご自身の生活や育児、仕事、そして「これまでの人生観」と照らし合わせて作品を読んでくださっていました。

  • 「孤独」「生きづらさ」「社会の常識への違和感」など、時代が変わっても変わらない「人間関係の悩み」について、三島というフィルターを通して対話を深めることができました
  • 「三島の尖った知性」「文学的才能」に対する感嘆や掘り下げだけではなく、非常に多角的な視点で「彼の人間らしい弱さや脆さ」に気づき、より温かい眼差しで作品を捉え直している点が非常に印象的でした。

文豪三島由紀夫が、皆さまとの対話を通じて、少しだけ「親近感のある一人の人間」へと変わった、実りある読書会でした。
この場所が、皆さまにとっての心地よい「サードプレイス」であり続けられるよう、これからも穏やかに、楽しく開催していきたいと思います。またいつでも、遊びに来てくださいね。

次回の読書会募集は、6月3日(水)20時~peatixで募集開始予定です。

  • 日程:2026年7月19日(日)
  • 時間:14:00〜16:00
  • 場所:横浜レンタルスペース
  • 人数:6名
  • 参加費:2000円
  • 対象:女性限定・年齢制限なし

好きな本を2冊紹介し、参加者同士で感想をシェアする『好きな本を語ろう!』読書会です。
1時間程度で完売することが多い参加をご希望の方は、募集開始後peatixからお早めにお申込み下さい。

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